今回は、”サッカーのディフェンスのポジショニング“についてと、”3バックと4バックの違い“について”ライフキネティック・トレーナーの視点“からお伝えしていきます。
まず、サッカーにおいてディフェンスは”ゴールを守る守備役のポジションである“ことと、”攻撃の要になっている“という点から書かさせていただきます。
今でも日本国内では、ディフェンスをする選手は背が高くてガッチリした選手をイメージしがちですが、世界や海外では時代と共にイメージが変化してきています。
確かに、ディフェンスなので相手の攻撃を跳ね返す為に、背の高さや体格がガッチリしていないといけないように感じますが、サッカー戦術の進化に伴って、そのイメージは無くなりつつあります。
特に、”センターバックとサイドバックの役割は明らかに違っています“し、”必要な能力にも違いが見られる“ようになってきています。
以前、こちらを記事にもしましたが”ビルドアップ“をする為には、ディフェンスラインからの組み立てが重要であり、サッカー先進国では既に、”サイドバックの必要な能力としてゲームメイク能力が備わっていないといけない“とまで言われるようになってきました。
サッカー戦術が時代と共に変化してきている中で、重要とされてきている部分は、”個々の選手が持つ総合的な能力“です。
更に、最近のルール改正によって”ゴールキックからのリスタートにおいて、自チーム選手のみペナルティエリア内でボールを触れても良い“となったことで、”ディフェンスの役割が注目される“ようになってきています。
まだ私が小学生だった頃は、何もできないサッカーが下手な子は、ディフェンス役として起用され、とにかく縦にボールを蹴りだすか、タッチラインの外にボールを蹴りだして相手チームの攻撃を断ち切る役割だけを与えられていました。
しかし、現代サッカーにおて、ブラジル選手の”マルセロ“や”ダニエウ・アウヴェス“などを見ていると、より攻撃的なポジションでプレーをしており、得点に絡むような活躍も見せています。
今回は、”ディフェンスのポジショニング“と”3バックと4バックの違い“がテーマなので、この辺については後ほど他の記事を書いて触れていきたいと思いますが、ライフキネティック・トレーナーの視点から見ると、”非常に高い能力が必要とされてきている“ということが分かります。
過去に、ディフェンスに関する記事も書いていますので、是非こちらにも目を通していただけたらと思います。
それでは、次のコーナーから”ディフェンスのポジショニング“についてお伝えしたいと思います。
目次
①ディフェンスのポジショニング
では、”ディフェンスのポジショニング“についてですが、こちらは文章だけでは説明が難しいので、簡単に作成した画像を使って説明したいと思います。
まずは”4バック“を基準に考えていきます。
図1
図1のように、4バックの場合はコートを4分割したようなポジショニングをとってディフェンスラインを形成します。
したがって、
“ある程度のイメージ能力が必要“
となります。
ようするに、”コートを上空から眺めるような俯瞰する能力“ですね。
俯瞰する能力に関しては、過去に記事を書いていますので、興味がある方は目を通してみてください。
ディフェンスのポジショニングにとって大切なのは、
“味方選手および相手選手との距離感“
です。
更に、そこへ”ボールの位置“が加わりますので、”脳の機能や発達が強く影響を与えるのは当然“のことと言えます。
では、相手選手やボールが加わることで、ディフェンスのポジショニングはどのように変化するのでしょうか?
図2
図2のように、ボールを持ったオフェンスに左サイドバックの選手が詰めていくような形になると、ディフェンスのラインはL字型のような並びとなります。
そして、こうしたラインが作られることにより、”ディフェンスの背後などにスペースが形成“されていきます。
図3
図3のように、ディフェンスのラインが変化することで、ディフェンスの背後にスペースが生まれます。
左サイドバックがボール保持者に対して寄った(ポジショニングした)ことで、その背後に大きなスペースが生まれていますね。
更に、ここから動きが発展していくと、
“味方選手の動きによってはオフェンス側にチャンスが生まれる可能性“
がでてきます。
図4
仮に図4のように、左サイドバック(a)の裏スペースに、オフェンス(A)が動いたとしましょう。
このイラストではオフサイドですが、”このオフェンス(A)の動きによってディフェンスのポジショニングが変化“することが予想されます。
図5
図5のように、例えオフェンス(A)がオフサイドの位置にいたとしてもボールを受けるまではルール上でオフサイドではありませんから、ディフェンス(b)も少し近寄ることになるはずです。
これによって、ディフェンスのポジショニングが徐々にズレていきます。
図6
図6のように、オフェンス(A)が元々いた位置にスペース(紺色部分)が形成され、そこに別のオフェンスが動き出したとしましょう。
当然、それを察知したセンターバックも、そのスペース(紺色部分)の穴をカバーする為に、ポジショニングを移動します。
すると、それと連動するようにして、右サイドバックの選手が更に生まれたスペースを埋めようと内側にポジショニングを取ります。
図7
結果として図7のように、それぞれディフェンスが空いたスペースを埋める(カバーする)ことが連動することにより、左サイドのスペースが図3の時よりも大きくなっています。
現在のサッカー戦術において、
“この右サイドの大きなスペースにオフェンス側のサイドバックが走り込む“
といった戦術が使われることが多いです。
それによって、サイドバックの選手が得点を決める頻度やゴールをアシストする場面も高くなっています。
それでは、ディフェンスのポジショニングを見ながら、サイドバックの得点やアシストするシーンを”ダニエウ・アウヴェスのプレー動画“で見てみましょう。
(一部省略していますので、約30秒の動画です)
ダニエウ・アウヴェスが得点したシーンでは、ボールを持ったオフェンス側にディフェンスがポジショニングしており、完全なフリーの状態でボールを受けてゴールを決めています。
次のアシストする場面では、狭いスペースでありながらもディフェンスラインの裏にタイミングよく抜け出して、ラストパスを送ってアシストを決めています。
このように、守備の役割を持つディフェンスがオフェンスに加わることで、相手ディフェンスのポジショニングに少しずつズレが生じてしまいます。
世界トップレベル選手たちは、その辺も計算に入れて戦術を理解しており、”脳の機能に関わる判断力“と”縦横無尽に走り切れるスタミナ“が他よりも優れていないとディフェンスをするにも厳しい時代となってきました。
なお、ブラジル選手のマルセロも含めて、彼らはシュートをする場面やアシストをする場面が非常に多いです。
それが何故なのかは、オフェンスに加わることでディフェンスのポジショニングをズラしてチャンスを作り出すことが目的だからです。
日本国内のジュニア年代では、8人制のサッカーが主流となり、それによって多くのスペースやチャンスが生まれやすくなっています。
本来は、”選手の出場機会を増やすこと“や”ボールに触れる回数を増やす“ことを目的として8人制が導入されました。
しかし、多くの指導者たちは、その中で”いかにして効率よく試合に勝つか?“だけを考えているように感じます。
当然、まだまだ”脳の発達に大きな差があるジュニア年代”では、”脳の発達が早いクラブチームに集まる選手たちの方が断然有利“になります。
その為、技術やコーディネーション能力云々よりも、”戦術理解や体格差(フィジカル)を重視するサッカーが多い“のは、そのせいかもしれませんね。
フィジカルに関する過去の記事もありますので、是非こちらもご覧ください。
次のコーナーでは、”3バックと4バックの違い“についてお伝えしていきたいと思います。
②3バックとは?
まず、”3バックと4バックの違い“を知る為にも、3バックを知る必要がありますよね。
先ほど図解で説明したのは、4バックのポジショニングでした。
なので、ここでは3バックのポジショニングを簡単なイラストを用いて解説したいと思います。
図8
図8のように、3バックでは”4バックよりも1人少ない状態“で、ポジショニングをとることになります。
たまに、システム論でサッカーを語る方もいらっしゃいますが、個人的にはあまりそこまで意識はしません。
ようは、”他の選手がしっかりと空いたスペースをカバー“してくれれば、”3バックだろうが4バックだろうが関係ない“と思っているからです。
では、何故ディフェンスを1人減らすようなことをするのでしょうか?
それは、
“オフェンスの選手を1人増やしたい“
からです。
昔ならば、「4-4-2」とか「3-4-3」というのが大雑把なシステム表記でしたよね?
見ての通り、「4-4-2」の場合は、ディフェンス4人に対して、ミッドフィルダーも加えると”オフェンスの選手が6人“です。
では、「3-4-3」の場合では、ディフェンス3人に対して、ミッドフィルダーも加えると”オフェンスの選手が7人“になります。
これにより、システムが”攻撃型“か”守備型“なのかが少しだけ判断できます。
私の場合は、ディフェンスを1人減らして、”中盤でボールを支配したい“と考えるので、3-4-3の方が好きかもしれません。
ですから、
“オランダの超攻撃サッカー“
は結構好きです(笑)
でも、だからといってディフェンスを3人だけで守り切るのは大変です。
図を見ても分かるように、4バックに対して”3バックでは1人の守るエリアが広くなる“ことが分かります。
そこで登場するのが、”ウィングバック“というポジションです。
私も高校時代に、ダブルボランチを採用した「3-5-2」というシステムをサッカー部で使用していました。
当時は、2人のディフェンダー(ダブル・ストッパー)の後ろに、もう1人のディフェンダー(スウィーパー)を置いた3バックが主流となっていました。
これは、当時の海外サッカーでも良く見かけられたシステムです。
この頃は、”プレッシングサッカー“というシステムも導入され、ACミランのアリゴ・サッキ監督が導入していました。
当然、日本代表でも”プレッシングサッカー“が採用された時期があり、加茂周監督が使っていた”ゾーンプレス“が有名です。
なお、ゾーンプレスというのは、ボール保持者を狭いエリア(ゾーン)に追い込んで、複数の選手で囲んでボールを奪う(プレスする)戦術です。
これを当時の加茂周監督は、”ブラジル的な4-4-2というシステムで採用“したことにより、”欧州的なプレッシングサッカーと上手く噛み合わなかったことが原因“で、”アジア最終予選途中で退任“することになりました。
高校時代に、この戦術を採用していたこともあり、当時の私は世界のサッカー戦術を”様々なサッカー専門誌“などで学んでいました。
今は発行されていませんが、”ワールドサッカーの戦術“という書籍を購入して読んでいた時期があります。
表紙はこんな感じです♪
この本を読んだことで、”現代サッカーと過去のサッカーのシステム変化“が図解で説明されていることもあり、かなり戦術の理解が進みました。
ちなみに、当時の3バック(ダブル・ストッパー)は、フォワード選手を個々でマンマークすることで、両サイドに大きなスペースが生まれてしまう為、現在のサッカーでは見ることがありません。
図9
図9のように、2トップのフォワード2人(赤)の距離が近づくことで、個々でマンマークしていたストッパーの距離も近づくことになり、それによって”両サイドに大きなスペースが生まれるという弱点“が出てしまいます。
なお、この両サイドにできる大きなスペースを”ウイングバック“や”ダブルボランチ“の選手たちがカバーし合うことで弱点を補っていました。
その辺のことについても、当時の試合中の写真等を用いて図解していますので、もし購入する意思がある方は、実際に本を手に取って熟読してみてください。
当時の定価は2,800円と、そこそこの値段です(汗)
ちょうど94年アメリカ・ワールドカップが開催された頃に発売されたので、その当時のブラジル代表やイタリア代表、ACミラン等の戦術が理解できます。
私個人としては、
“この本を読まずにサッカーの戦術を語ってほしくないな“
という想いもありますが...
今では、中古本でしか手に入れることしかできないようなので、私にとっては貴重な書籍の1冊です。
それと、もう一冊お勧めしたい書籍があります。
それがこちらの
こちらは、連続写真と図解および付録のCD-ROMで、”ディフェンスの基本“を学ぶことができます。
一時的に、ドイツサッカーが低迷した頃、ドイツが取り組んだ”ディフェンスの指導方法“などが書かれている書籍です。
私が幼かった頃は、
“ディフェンスはボール保持者をコートの端へ追い込め!“
と教わりましたが...
この書籍では、”数的優位を作ることをメインに説明“されています。
逆に言うと、
“数的不利を作らないようにするディフェンス法“
を知ることができます。
以上、私が購入した書籍も含めて、”3バックについて説明“させていただきました。
それでは次のコーナーで、”3バックと4バックの違い“についてお伝えします。
③3バックと4バックの違いとは?
さて、ようやく今回のテーマでもある”3バックと4バックの違い“を説明することとなりました。
ここまで説明する為のイラストを作成したり、書籍の写真を撮ったりと時間を取られてしまいましたが...(汗)
では早速、”3バックと4バックの違い“を簡単に説明したいと思います!
まずは、94年アメリカワールドカップにおける”ブラジル×オランダの試合動画“をご覧ください。
(一部省略していますので、約1分10秒の動画です)
この試合では、先にブラジル代表が2得点をあげており、オランダは2失点目を与えたものの、すかさず1点を取り返しています。
試合開始から65分あたりまでは、”お互い4バックのシステムを採用“していました。
動画の5分前あたりに、ライカールが退いてロナルド・デ・ブールが交代出場した際、オランダ代表は”4バックの右サイドバックだったビンテルをミッドフィルダーの右サイドにポジションを変更“しています。
ここからオランダ代表の超攻撃的な3-4-3が始まります。
動画を見ていると、”中盤に人数が1人増えたことで、オランダの中盤が厚くなり、ボールの支配率も高くなっている“のが伺えます。
当然、”中盤でのボールに対するプレッシングも速く厳しくなった“ことで、ブラジル代表の攻撃が単調になってきたのも感じられます。
つまり、この時の3バックは、”ディフェンスの数を1人減らして、ミッドフィルダーの人数を1人増やすことによって、中盤での攻防を厚くするという効果“がありました。
それぞれ個々の技術が高いブラジルといった南米チームを相手にする場合、3-4-3で中盤を厚くして、”中盤で自由にプレーをさせないという欧州的な考え方“がこの試合にはありました。
もっと詳しく知りたいという方は、
“超攻撃サッカーを目指して 3-4-3“
を是非ご購読してみてください。
こちらの書籍も、私は既に購入しています♪
こちらは、ちょうど”ザッケローニ監督が日本代表を指揮していた頃“のものなので古い内容となりますが、”3-4-3システムを理解するには十分“だと思います。
この本を手に取って、更にその試合を実際に動画等で見て学べば、かなり戦術的な理解が深まるはずです。
個人的に感じている分部としては、”3バックも4バックも個々の運動量が鍵を握る“というのが現状です。
個々の運動量が少ない状態で、どのようなシステムを採用したとしても、決してシステムは上手く機能しません。
日本のサッカーは、まだまだ”運動量とフィジカルでカバーするといった傾向が強い“ので、”欧州的なサッカーが合うのかも“しれません。
ということで、今回の記事は以上となります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は”サッカーのディフェンスのポジショニング“についてと、”3バックと4バックの違い“について”ライフキネティック・トレーナーの視点“からお伝えさせていただきました。
現代サッカーにおいて必要なのは、”ディフェンスといった最終ラインから試合を組み立てるビルドアップ能力“であり、その為に”脳のイメージ機能を向上させる必要がある“ことがお分かりいただけたと思います。
また、ビルドアップ能力には”俯瞰する能力“だけでなく、”視野を広げる為のトレーニングも必要“です。
過去に、”視野を広げる“に関する記事も書いていますので、是非こちらにも目を通していただけたらと思います。
今後も、ポジション別の記事を少しずつ更新していく予定なので楽しみにしていてください!
ここまでお読みくださり、ありがとうございました♪