今回は、”サッカーのボランチの意味や語源“と、”役割・動き方・ボールの受け方などのコツ“をお伝えしていきます。
多くの方は、”サッカーのボランチ“がポルトガル語で”車のハンドル“からきていると解釈されていますが...
しかし、
“実際そうではない“
ということをお伝えさせていただきます。
では、次のコーナーで”ボランチの意味“についてお伝えします。
目次
①ボランチの意味
まず、”サッカーのボランチ“の語源ですが、”アルゼンチン選手のカルロス・ボランチ“という人の名前からきているという説があります。
彼は、1940年代にフラメンゴでプレーをしており、ディフェンスの前(中盤の底)でプレーするように指示され、そのプレーが周囲の見本になったことから、ボランチシステムを採用した監督から「いいか、”ボランチ“のようにプレーするんだ!」とボランチに起用された選手たちに繰り返し言っていたのが始まりのようです。
ちなみに、ポルトガル語の辞書でボランチという単語を調べると...
車のハンドルに始まり、空を飛ぶもの。固定されないもの。常に移動し続けているもの。
といった意味が並ぶようです。
それにしても、”サッカーのボランチの語源が人の名前“だったなんて...
こうして、”背番号5の選手がボランチと呼ばれるようになった“のは、その選手が”車のハンドルのようにチームの方向性を決定、チームの指揮を執る役割を担っていたから“だそうです。
詳しいことは、下記の「VOLANTE30”ボランチ”とは何か?」に書かれていますので、興味がある方は手に取って読んでみてください。
表紙はこんな感じです♪
かなり色褪せてしまっていますが、”真のボランチを知る“には欠かせない1冊だと思います。
なお、”カルロス・ボランチの後継者“として存在していたのが、”1950~60年代に活躍したジト“、そして”1970年代にボランチの代名詞となったクロドアウド“というブラジルの選手たちです。
ついでなので、”クロドアウドのプレー動画”を少し見てみましょう。
(約3分の動画です)
個人的な感想としては、”現代のボランチとは少しイメージが違う“ような感じがしますね(汗)
でも、動画のプレーや技能などを見ていると、”元イタリア代表のピルロ“が唯一この”真のボランチに該当する選手“のような気がします。
ということで、”ボランチの意味“はこの辺までにして、次のコーナーでは”ボランチの役割“についてお伝えしたいと思います。
②ボランチの役割
そうでは、”ボランチの役割“についてお伝えしていきます。
ちなみに、ボランチの概念はブラジルと日本のみで、欧州ではボランチという言葉や概念はないようです。
その為、ここでは”スペインのピボテ“・”イングランドのセントラルMF“・”イタリアの守備的MF“と解釈して、ボランチの説明をさせていただきます。
なお、ブラジル人が指す“真のボランチ“とは、1950~1960年代に活躍したブラジルのジト、その後1970年代になって活躍したブラジルのクロドアウド、更に1980年代までにかけて活躍したブラジルのファルカン(元日本代表監督)たった3人だけのようです。
それ以降は、クロドアウド自身が”不器用なボランチ“と呼称しており、どうやら”ボランチに必要な要素を有していないボランチを指している“ようです。
では、クロドアウドが伝えている”真のボランチの条件“について、下記に書き出してみましょう。
- 守備力
- ゲームを組み立てる能力
- パス能力
- リーダーシップ
つまり、上記の”4つの要素“を兼ね備えた選手をブラジルでは”真のボランチ“と呼ぶそうです。
ですから、能力としては”ディフェンスの能力“と”俯瞰する能力“、そして”ビルドアップ能力“が求められます。
こられに関しては、過去に記事を書いていますので、そちらを参考にしていただければと思います。
サッカーのディフェンスを向上させる3つの要素とコツ。秘訣は学習転移とカンナバーロ!
サッカーのディフェンスのポジショニングについて。3バックと4バックの違いとは?
さて、それでは”ボランチの役割“ですが、私たちは日本人なので”真のボランチを目指す必要はない“と思いますので、”皆さんが目指すボランチにの役割“について考えていきたいと思います。
まず、日本的な考え方のボランチの役割としては、”守備に貢献できる選手である“ことと、”ゲームを組み立てられる選手であること“が一番重要です。
それでは、参考までにロシアワールドカップで優勝した”フランス代表カンテのプレー動画“を見て、その役割を見てみましょう。
この動画では、”早い段階で積極的に相手攻撃の芽を摘む“のが確認できますし、”ゲームを組み立てる場面で貢献している“と思います。
冒頭でお伝えしたクロドアウドと比較すると、当時のサッカーの質そのものが違っていることもあり、完全に比較するのは難しいですが...
よりスピーディーでシステマティックな現代サッカーにおいて、このくらいの能力がないと、世界で活躍するのは厳しいような気もします。
私自身も、社会人サッカーでボランチのポジションでプレーをしていた時期があります。
その時にディフェンス面で意識したことは、”相手がボールに触れる前にインターセプトを狙う“ことと、”相手のパスやドリブルを制限して自由にさせないこと“でした。
一時的にスランプ状態に陥り、”味方選手からパスを受けること“や”ビルドアップの場面でパスを配給する“ことが怖くなった時期もありました。
そもそも社会人サッカーで、そこまで心理的に追い込まれるようなサッカーはしたくなかったのですが、所属していたクラブが県1部を目指していたこともあり、必死にトレーニングに参加しながらレギュラー争いをしていた過去を思い出します。
若い20代後半あたりまでなら、”運動量の部分で問題はない“のですが、30代を境に今までのような運動量に期待が持てなくなります。
つまり、歳を追うごとに、いかに試合の中で楽をしようかと考えてしまうわけです(汗)
そうなってくると、レギュラーとして出場が難しくなってくる為、もう少しレベルを落として地域のリーグで楽しくプレーすることを選択するようになっていきます。
皆さんが、どの位のレベルを目指すかにもよると思いますが、ボランチには”高い運動量“と”広い視野“、そして”サッカーの基本的な技術“がなければ絶対に務まりません。
それでもボランチとしてプレーしたいという方は、世界で活躍している選手たちの技術を学びながら、過去に書いた記事などを参考にして、”サッカーに必要な基本技術“を磨いていってください。
それでは続いて、”ボランチの動き方“についてお伝えします。
③ボランチの動き方
次に、”ボランチの動き方“ですが、しっかりと”ポジションの役割を理解“していれば、どのように動くべきかは把握できるはずです。
まずは、相手がボールを保持している時は、
“攻撃を遅らせて自由にプレーをさせない“
“相手チームのパスのインターセプトを狙う“
ことです。
ただし、上記のプレーを判断よく行う為には、”味方チームのディフェンスラインがどの辺まで押し上げているのか?“や”現時点で数的優位なのか数的不利なのか?“を見極めなければなりません。
味方のディフェンスラインの押し上げが高ければ、”より高い位置で相手にプレスをかける“ことができますし、”数的優位の状況であればプレーを徐々に限定“させていき、もし味方が”数的不利の状況ならば相手の攻撃を遅らせる“といったことを瞬時に選択します。
この辺については、実際にコートの中でプレーをしながら感じ取っていくしかないので、”多くの経験を重ねる必要がある“と思います。
次に、味方チームがボールを保持している時は、
“味方のディフェンスラインの方を向いてボールを受ける”
“味方のディフェンスラインに並ぶような形でボールを受ける”
といったプレーが必要となります。
それでは、続いて”日本代表の柴崎岳選手のプレー動画“を参考に見てみましょう。
(約1分10秒の動画です)
私の経験からボランチは
“1つ目のパスだけでプレーが終了することはない“
です。
“常に周囲の状況を把握“し、”パスを出した後のことも考えながらポジション取りをする“ことになります。
更に、”2つ目のパスや3つ目のパスコースをイメージしながらプレーをする“こともしなければならず、”2手先、3手先のプレーのイメージを持つことが重要“です。
まずは、”サイドの味方や中央の味方にボールを預け“て、そこから更に”自身がパスを受けて、遠い逆サイドにパスを配給する“といったプレーも多くなると思います。
よく海外の指導では、”ショート・ショート・ロング“といったパスの選択方法の指導を受けますが、日本サッカーの父でもあるデッドマールクラマー氏は、”チョップ・チョップ・アザーサイド“という言い方で指導をしていたそうです。
どちらの言い方も内容は似たような感じですね。
現代サッカーでは、コートを分割するような形で”選手が片寄る傾向が高い“ので、”フリーの味方選手がいる逆サイドなどにロングパスを狙うというのが非常に有効“です。
ただし、このタイミングというかプレーの流れが相手に把握されてしまうと、相手ディフェンスラインや相手のボランチに”パスコースを予測されてしまう恐れも出くる“ので、しっかりと”相手の予測を外すプレーも考慮“しなければなりません。
ボランチの基本的なポジション取りとしては、
“センターサークル付近でのプレーが多い“
と思います。
ではここで、クライフ監督が率いるバルセロナで、ピボテのポジションをしていた”現役時代のグアルディオラのプレー動画“を見てみましょう。
(一部省略していますので、約3分20秒の動画です)
当時のバルセロナはタレントが豊富で、ストイチコフ、ロマーリオ、クライファート、ロナウドといったスター選手が常にFWにいました。
当然、そうしたFWがいたからこそ、グアルディオラのラストパスを呼び込み、決めるべきところでゴールを決めていたのでしょう。
社会人のサッカーでは、たとえラストパスが通っても、ここまで綺麗にFWが得点を決めることはありません(笑)
では、次のコーナーでは”ボールの受け方“についてお伝えします。
④ボールの受け方
ここまで、様々なボランチ選手のプレー動画を見てきたと思いますが、そのプレーに見慣れてくると”ボールの受け方“も見えてくると思います。
ボランチは、中央に位置するポジションが多くなる為、”後方からのパス・左右からのパス・前方からのパス“と四方八方からパスを受けなければなりません。
ですから、この時に必要なのが
“ボールを受ける際のコーディネーション能力(身体の使い方)“
です。
その中で、最低でも身につけておかなければならないコーディネーション能力としては、”身体を反転させながらボールを受ける能力“です。
よくジュニア年代の選手たちを見ていると、
“この動きが上手くできていない選手が多い“
ことに気づきます。
これは、指導をしている指導者も教えることができないのでしょうか...
いまだボールを受ける際に
“足を引くようにしてボールを止める“
と勘違いしている方もいるようです。
ちなみに、この動きは”ヒンンジ式の動き“になる為、”無駄な動きが多くなる傾向がある“と言えます。
これは、スペイン代表選手たちのボールの受け方を見れば、その違いは明らかです。参考までに動画をご覧ください。
(約1分10秒の動画です)
ここで注目してもらいたいのが、
“ボールの向きと身体の向き“
です。
しっかりと、”次のプレーに繋がるコーディネーション“をしています。
こうした技能を大人になって初めて知るのか、それとも、こうしたことに早く気づいて幼いうちに習得するとでは”大きな違い“があります。
さて皆さんは、どちらを選ぶでしょうか?
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、”サッカーのボランチの意味“と、”役割・動き方・ボールの受け方など3つのコツ“をお伝えさせていただきました。
本来の”真のボランチ“は、かなりハードルの高い能力が必要とされることが分かっていただけたのではないでしょうか。
ブラジル人からすると、ボランチはポジションというよりも”能力に長けている選手を指すイメージが強そう“です。
逆に日本では、”そこそこ器用で戦術眼を持った選手がこなしている“ように感じられます。
なかには、”不器用なボランチ“と呼ばれる”疑似ボランチ“のような選手もいるとは思いますが、既にこれだけボランチという言葉が日本国内に広まってしまった以上、ブラジル的なボランチのイメージは日本国内に無いと思います。
また、こうしたことから”日本国内におけるボランチのイメージ“というものが、今後の日本サッカーの発展によって、”どのように変化していくのか“を見ていくのも楽しいかもしれませんね。
記事の冒頭でもお伝えさせていただきましたが、
“ボランチには様々な能力が必要“
とされます。
是非、下記の記事もご覧になって、”ディフェンスの能力“・”俯瞰する能力“・”ビルドアップ能力“の向上に役立てていただけたらと思います。
サッカーのディフェンスを向上させる3つの要素とコツ。秘訣は学習転移とカンナバーロ!
サッカーのディフェンスのポジショニングについて。3バックと4バックの違いとは?
ここまでお読みくださり、ありがとうございました♪